【ウエディングSTORY】小さなスプーン
いちごがキラキラ光る、大きなケーキが運ばれてきた。
定番で見るケーキ入刀のシーンだけれど、
花嫁目線にたってみると、当たり前だけど新鮮で、
すごく幸せな気持ち。
楽しみなのは お母さんにお願いをしておいたラストバイト
お母さん、緊張してるかな・・?
お母さんが近くに来たところで、
「泣かないでよ?私も泣いちゃうから!」
そういってるそばから、お母さんは涙目。
司会の人は私たちの様子を見ていたのか
とても温かな声色でお母さんの紹介をしてくれて、こう続けた。
「お母さん、用意してくれたあのスプーンで食べさせてあげましょう・・」
私は何のことかわからずお母さんを見た。
お母さんの手から出てきたのは
私が本当に小さい頃から使っていた、スプーン。
ペンギンのイラストが、こすれて消えかかっていて
みっともないからもう新しいの使ったら?って
何度も言われたことがあったけれど
どうしても愛着があった
お気に入りのスプーン。
わたしが一人暮らしをするまで、何年も使っていたんだよね。
お母さん、大切に持っていてくれてありがとう!
かすかに震えるスプーンで食べさせてもらうケーキは
もう2度と食べられないんだろうと思うくらい
甘くて美味しくて。
特別な味がしました。