彼女とのダンス
「2人で一緒に踊った事ってあるっけ?」と彼女が聞いたとき
ぼくはちょっと考えて 思い出して笑って 少し涙もでた。
彼女が「何! 何?」と聞くので
「あれだよ あれ。 皆で遊びに行ってカラオケに行ったことがあるでしょ?
まだ、付き合ってはいなかったけど、覚えてない?なんて言うんだっけ ツイストダンス?
片足あげるやつ ほら 寺尾 聡のルビーの指輪」
彼女は下を向き、肩をふるわせ、押し殺した声は次第に大きくなった。
彼女も少し笑い涙が出たようでハンカチを出す。
「うまく伝わるかわからないけどもあれはダンスで 私が踊るっていう表現とは少し違うかな。」
僕は頭をめぐらせる。 全く分からないという訳ではないが 大体の男は鈍感で
答えに辿り着かないし 僕の師匠の言葉を借りるなら「大体は男の勘違いだ。」
と言うことなのでこの場は話をごまかすとしよう。
それも察して 彼女は話を変える。
そういう所も含め 僕は彼女が特別な人だと感じる
それからその話題にはならなかったが 僕の頭の中で
その宿題は残っていた。 結婚式当日、よく晴れた冬の日だ。
昨日、降った雪がガーデンに積もり 外からの音を遮断する。 とても静かだ。
氷でつくられたステージに立ち目を閉じる
ダンス ダンス ダンス
頭の中のもやもやがとけていく
僕は自分なりに答えに辿り着く
挙式で彼女と歩く ゆっくりと
今、彼女にその事を言おうか迷う。 すると彼女が「どうしたの?」と横目で見る
僕は話しだす。「はじめて踊った話。。。今 思うとね、はじめて会ったとき、話した時、
はじめてメールしたとき、電話したとき、デートの誘いに成功したとき、昨日、今日、今、
僕の心は常に躍っているよ」
「そして これからも、 これが僕の出した答え」
彼女は友人たちに手を振っている。
「聞こえなかったかな?」と少し不安になる
式が終わりに近づき、誓いのキスをする
唇を離すと彼女が微笑みながらこう言った「正解」
そしてもう一言付け加える。
「今日も一緒に踊ろうね!」
そう 2人のダンスは始まったばかり
ここジャルダン ドゥ ボヌールで