家族が増える結婚式という日
あぁ、この重たい挙式場の扉が開かなければいいのになぁ
それは とても複雑な心境で
とてつもなく長い時間に思えた
今 私の左腕を掴む君がお嫁にいこうとしている
16年前にお母さんが天国に行ってから
いつも3人仲良く過ごしたね
父さんひとりじゃ不満もたくさんあっただろうに
お姉ちゃんも 君も
素直に たくましく育ってくれたね
ついに 今日で父さんは一人ぼっちになるね
お姉ちゃんに比べて、少し早い旅立ちだね
けれど君が選んだ人生
しっかり歩いて行ってほしいから、父さんは送り出そう
それはとてつもなく長い時間に思えた
けれど
君を受け渡すこの時間はあっという間にやってきた
実は何度も想像してきたこの瞬間
だけれど
どうしても最後に君の背中を押すことができなかった
君の手を放すことができなかった
その時間は どれほど長い時間だっただろう
伝えたい言葉はただひとつ
「・・・―娘を頼む」
やっとの思いで出た一言を受け止め、二人は力強く歩いていった
二人の背中は大きく、たくましく見えた
やぁ大きくなったね。
きっと心配はいらないね。
ひとつ気づいたことがあったよ。
今日は父さんが一人になる日ではなく
家族が増える日なんだね。
心からおめでとう。