大切な人
普段無口な私の父は
私が結婚することにしたと
報告した時でさえ
特に何を言うわけでもなく
分かった。
その一言だけだった。
本当はいつもどう思っているのだろう
娘の私でさえ分からない。
少しそんなモヤモヤとした気持ちを
抱えながら結婚式を迎えた。
赤いバージンロードを歩く。
隣には父がいる。
歩き始めたとき、私にだけ聞こえるくらいの小さな声で
絶対に幸せになるんだよ
でも父さんはいつまでもお前の父さんだから
そう真っ直ぐと前を向きながらささやいた。
お父さん、心配しないで。
私絶対に幸せになるから
そう笑顔で答えた。
父はいつものように
分かった。と一言だけ。
そう言い終えた父は、真っ直ぐ前を見ながら
鼻をすすっていた。