思い出の笑顔
私は幼い頃からピアノを習っていた
習い始めたきっかけは覚えていないけれど
頑張って練習すればするほど、上手に弾ける喜びから
どんどんピアノの虜になったのを覚えている。
それでも、一番嬉しかったのは上手に弾けると
お母さんが「すごいね!」「上手だよ!」と喜んでくれる笑顔が嬉しくて
毎日ピアノに向かっていたのを覚えている。
時が立ち、気づけばピアノを毎日弾いていた日が嘘のように
ピアノから遠ざかっている日々。
私の結婚が決まり、
会場のプランナーさんと打ち合わせの時
「お母様との思い出ってありますか?」と聞かれ母の顔を思い出したとき
頭に浮かんだのが、小さい頃のピアノの演奏を喜んでくれている笑顔だった。
もう一度あの笑顔を見れたら・・・
あの時間はかけがえのない私と母の大切な思い出なんだと
改めて感じた。
この結婚式で、幾度となく感謝を伝えたいと思っていた。
手紙もいいけど、気持ちを込めてピアノの演奏をプレゼントしよう。
曲は、母の大好きなあの映画の主題歌にするつもり。
久しぶりに向かい合ったピアノ。
目の前に広がる風景や鍵盤の重みが懐かしく、
スムーズに指が動かない事がブランクを感じさせられる。
迎えた当日。
久しぶりに会う友人や親族に迎えられ、本当に楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
いよいよかな・・・
ピアノの演奏が近づくにつれ、大きくなる緊張感。
ピアノに向かい、一息つき演奏をはじめるとあっという間に時間が通り過ぎていった。
拍手の音と達成感に満ち溢れながらも
お母さんに気持ち届いたかな?
そう思いながら振り返るとあの時の笑顔で涙を流しながら拍手を送ってくれるお母さん。
思わず駆け寄り、抱きつき一言
「ありがとう」
そう伝えると
「やっぱり、上手だね・・・
幸せになりなさい」
そう、耳元で囁いてくれたお母さん。
あの頃と同じ言葉に思わず笑いがこみ上げ
「お母さんも、これからも幸せにね」
思わずそう答えていた。