出立式
朝起きたとき
いつもの天井
朝日が差し込む窓を背に
眠い目を擦りながら
慣れた廊下を通って洗面台に向かう
「あらおはよう」
いつも通りの母親
もうキッチンにたって
せっせっといつも通り料理をしている
「あらぁおはよう、早いのね」
いつも通りの祖母
キッチンの後ろのテーブルで
たくさんのお茶を入れている
「おう」
そう、言って手をあげる父親
リビングのソファにデンと座り
新聞に目をやりながら
そういつもと変わらない風景だ
でもどこかそわそわしているような
そんな朝
顔を洗って部屋に戻ったとき
窓辺に朝日に照らされて
眩しく輝いている
白いウエディングドレスが目に入った
そう、今日はわたしの結婚式の日
育ったこの部屋で
このドレスを着てお支度をして
教会に向かう
しばらくドレスを眺めていたら
ピンポーン
聞きなれた家のベルがなった
「おめでとうございます！お邪魔いたします」
そう言って家に入ってきたのは
担当のプランナーさんとヘアメイクさん
そしてカメラマン
「さぁいよいよですね」
キラキラしたその目を見たとき
はっと我に返った
そう今日はわたしの結婚式
ふと見たら、
プランナーさんの後ろから、
母親と祖母、
そして父親がなんとも言えない顔で
こちらを見ていた
ちょっといつもとは違う、
特別な日なんだな
そう思いながら慣れた廊下を通って
慣れた部屋でのお支度をスタートさせた
その生まれ育った部屋からお嫁に行けて
わたしって幸せだな、
そう思った
